藍染師

アワガミの藍染め和紙は、「奥さん」と呼ばれる藤森美恵子が担っています。
アワガミファクトリーを営む藤森家に嫁いできて、紙づくりの現場をずっと縁の下で支えてきました。
本格的に藍染和紙に取り組むようになったのは、子育てがひと段落してから。
義母のツネの手伝いをしながらながら、藍で和紙を染めるさまざまな技術を学んできました。

「藍の花が咲いとるけん、今日は藍の状態がいいんよ」と、藍甕を指差します。
藍はすくもを建てて染液をつくります。
“すくも”は藍の葉を発酵させ、腐葉土の状態にしたものをアルカリと還元することにより、いわゆる「建て」た状態になって、はじめて染めることができます。
藍甕の中にある染液の状態を見極めることも、イメージ通りに染め上げるためにも重要です。

この日は朝から無地染めの「紺紙」を染めていきます。
耐水性を持たせるためこんにゃく糊を両面に塗布した和紙を、染色前に充分に水に浸しておきます。
こうすることでムラなく中まで浸透させることができます。
吊り具に紙を吊るし、ロープでゆっくり昇降させながら藍瓶に紙を浸して染色をします。
紙がすべて染液に浸ったら、タイマーで浸す時間を計ります。

数分後、ロープをゆっくり引き上げると、茶色に染まった紙が出てきます。
空気にしっかり触れさせることで酸化が起こり、緑色へと変わっていきます。

紙に残るアクを充分に落とすため、シャワーでしっかりと洗い流すと、アクが流れて、青色が出てきます。
これを繰り返すこと数回、ようやく濃い藍色に紙が染め上がりました。

最後に水につけて、完全にアクを取り除き、吊って自然乾燥をします。

午後からは「ぼかし染め」を行います。
ぼかし染めは、濃色から淡色、そして白に向かう自然なグラデーションが魅力の染め方です。
ムラのないなめらかなグラデーションをつくるため、ずっと手を動かしゆっくりゆっくりとロープをたぐらなければいけません。どこかで手を止めてしまうと線状の柄がついてしまうので、丁寧にゆっくりゆっくりとロープをたぐっているのです。

アクを落とし、浸水し、脱水し、今回は「シワ加工」を残したままでというオーダーでしたので、もみジワを美しく残すため、台の上に広げて自然乾燥で仕上げます。 こうして作られた藍染の和紙を提灯に仕立てたものが、ザ・コンランショップで販売されました。 「自分が作った紙が、新しい感性で魅力的なプロダクトに変わってうれしい」と、頬をほころばせます。

この日、夕方までに染め上がった紙はわずか10枚。
1日に染めることができる枚数はこのようにごくわずか。
最後の浸水をしている間、この日の作業の記録をノートに書いています。
藍染の仕事をはじめてからずっと書いているノートを見せてもらうと、作業の記録が克明にびっしりとつけられています。
こうやって経験したことの記録をつけておくことが自分のノウハウとなり、新しいことに挑戦するときの判断基準にもなると言います。

「イメージする藍の色を出すためには、どんな苦労も厭わずいろんなことにチャレンジしていきたい」と、目を輝かせます。

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