皮剥作業の極意
蒸気が調子よく出てる間にお昼を済ませ、次は皮剥ぎ作業です。この日の作業で誰もが最も興じたのがこの作業だと言っても過言ではありません。
蒸気を止めてしばらく置いた蒸し器のフタが開かれます。佐藤氏によると「丁度良く蒸せた」三椏の束が次々と、いいにおいを放って転がり出され、束もほどかれます。「何かの匂いに似ている!?」と一同思いつくものを言い合いますが、果たしてどれが正解なのか。枝は赤身を帯びた褐色になり、しんなりしています。すかさず佐藤氏が皮の剥ぎ方指導して回ります。まず持ち方としては、枝の根元を上にして切り口辺りを握ります。そこでぐりっと回すと芯と表皮とが、いとも簡単に分離します。皮を剥ぐに当たって、無理やり裂いてはいけないそうな。「日の当たる方の皮が厚く、陰になってた方が薄い。こうすると(と言ってぐりっと回す)薄いほうが自然に裂ける」と。なるほど切り口をよく見てみると、果たして日当たりが関係してるのかどうかはわからないけれど、周囲のどこかが厚くて薄いのでした。こういうのも昔の人の知恵かしら、と感心します。

三分の一くらいまでは、三又が大きいので、まるでバナナの皮をむくようにすんなり剥がせて非常に気持ちが良いものでした。そこから先は枝が細かく分離しているので、一筋縄ではいきません。そのために、あらかじめ柱(というか杭というか)を設置しておく必要があります。今回は竹を割って杭にくくり付けましたが、そんなものなら何でも良いそうです。途中まで皮が剥げた三椏の最初の三又部分を竹に引っ掛け、自分は今度は皮の方を引っ張ります。幼児が衣服を脱ぐのにバンザイをして、服の裾をお母さんがつかんでに上に引っ張るのによく似た感じです。
この杭を使うと蒸し立ての柔らかい幹の叉が裂けやすいので、自然と二人仕事になっていきます。ある程度まで剥けたら隣の人を捕まえて幹の根元を持ってもらい、自分は逆方向に皮を引っ張ります。まるで綱引きです。まさに「うーん、よいしょーっ!!!」で、気持ち良く剥けたらやはり後味がすこぶる良く、「さあ、次いこうか!」となるのでありました。
時折ちらちら雪も舞い、和紙会館のVTRで見た、昔ならではの光景に近づき雰囲気も増していきます。始めは声をあげてはしゃいだ一向も一心不乱に作業に夢中になるにしたがって、次々皮を剥がれた枝が山積みになっていきます。(剥がされた皮は藤森家のおばあさんがせっせと集めて、横に吊った竹に干していくのでした。)
この三椏の枝、生け花の花材として漂白されて使用されているようですが、蒸し立て・皮剥がし立てのこの状態では何とも言えず色っぽい。色はやや黄身を帯びたクリーム色で、水分が残っていてしっとりすべすべしています。さすが女性的な和紙の原料の代表だけあり、芯まで女性的です。「柔肌ってこんな感じかな?」と皮のアクにまみれた我が手と見比べてしまうのでした。

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